ゆりしましろ先生による『網代さんは逃がさない』は、“他人からどう見られているか”と、“本当はどういう人間なのか”のズレを描いた作品だ。営業部のエースとして振る舞う網代は、周囲から勝手な噂を流される存在でもある。しかし、本作が面白いのは、その噂の真偽ではなく、鈴木自身もまた無意識にその視線へ飲み込まれていた点にある。関係が近づくほど、見えていなかった本音が静かに輪郭を持ち始める。
商品価格を含め情報の一切は2026年6月9日現在のものです。
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キャラクターの魅力|網代と鈴木にある“見る側”と“見られる側”

網代は強引に距離を詰めてくるタイプの人物だが、その積極性の裏には、不器用な好意が隠れている。
一方の鈴木は誠実ではあるものの、周囲の噂に引っ張られ、網代を無意識に“そういう女性”として見てしまっていた。
二人の関係は、単なる恋愛というより、“相手をちゃんと見直していく過程”として描かれている点が魅力だ。
だからこそ、誤解が解けた瞬間の空気が非常に柔らかい。
構成と演出|噂話が作り出す心理的な距離

本作では、枕営業の噂そのものが重要というより、“噂が人間関係をどう歪めるか”が主題になっている。
鈴木は網代に惹かれながらも、どこか疑いを捨てきれない。
しかし、網代本人の言葉や態度に触れることで、その認識が少しずつ崩れていく。
この、先入観が剥がれていく過程が丁寧に積み重ねられているため、後半に向かうほど二人の距離感が自然に変化して見える構成になっている。
読者体験|誰かを決めつけていたことに気づく感覚

読者は鈴木の視点を通して、“噂”という曖昧な情報だけで他人を判断してしまう危うさを追体験することになる。
網代は最初から変わっていない。
しかし、鈴木の見方が変わることで、同じ言葉や態度がまったく違って見え始める。
この認識の変化が、本作に静かな説得力を与えている。
恋愛の高揚感というより、理解し直すことの温かさが残る作品だ。
まとめ|網代さんは逃がさないが描く誤解の先の関係

『網代さんは逃がさない』は、他人の噂やイメージではなく、本人そのものを見ようとする物語だ。
人は知らないうちに誰かを決めつけ、その視線のまま距離を測ってしまう。
しかし、本当に近づくためには、その先入観を手放さなければならない。
誰かをちゃんと理解したいと思った時に、ふと読み返したくなる一作。
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